不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
 しかし次の瞬間、顔をクシャッとさせて自分のことのように喜んでくれた。

「本当にすごいな。声をかけられるなんて。きっと桜花の海外で着物文化を広めたいって思いをわかってくれたんだろう。いつ頃出店とか具体的に決まっているのか?」

「ううん、それはまだで……。その、実は返事もしていないんだ」

 あまりに大翔が喜んでくれたから戸惑いながらも答えると、「どうして?」とすかさず聞いてきた。

「ずっと夢だったんだろ? 飛行機にも乗れるようになって問題はないはずなのに。せっかくのチャンスなのに……」

 理解できないと言わんばかりの大翔に、胸の内を明かした。

「だって受けたらしばらくはロンドンで生活することになるんだよ?」

「それはそうだろ」

「何年もかかるかもしれない。そうなったら簡単に会えなくなるし、結婚して子供を授かるのも遅くなるんだよ? 家族はみんな私たちの結婚を望んでいるし、大翔、子供が好きでしょ それなのにいいの?」

彼の本音が聞きたくて切り込むと、大翔は目を細めて愛おしそうに私を見つめた。

「なんだよ、それ。桜花はそんなに俺と早く結婚したかったのか?」

「えっ! いや、その……!」

 違うと否定しようとしたが、すぐに言葉を飲み込んだ。彼といつか結婚したいと望んでいるのは間違いないから。

「それに子供のことまで考えてくれていたんだな。……嬉しいよ、すごく」

 大翔がしみじみと嬉しそうに言うものだから、なんて答えたらいいのかわからなくなる。すると彼はギュッと私の手を握った。
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