不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
 多くの季節を離れて過ごして数年――。私は羽田空港発、ヒースロー空港着の便に搭乗していた。

 三十三歳になっても相変わらず過保護な大翔は、仕事の疲れを機内で癒せるようにとファーストクラスを手配してくれた。おかげで毎回快適な空の旅ができている。

 二年前にロンドンに出店したセレクトショップは口コミで評判が広まり、大盛況となっている。

 今ではイギリス国内に五店舗、さらにアメリカやイタリアなど世界六か国に出店していて、今後も増えていく予定だ。

 つい最近、日本の雑誌に着物文化を広める著名人として紹介され、さらなる反響を呼んでいる。

 すっかりと松雪屋の若旦那が板についた兄から、雑誌を見たという若い人が多く松雪屋に来てくれているそう。七歳になる幸助も店に立っていて、未来の若旦那として大人気だとか。

 そして二年前、新たな家族が増えた。兄と雪乃さんの間に元気な女の子、愛(あい)華(か)が誕生したのだ。もう兄は幸助が生まれた時以上にデレデレで、幸助は「パパ気持ち悪い」と言っていた。家族のことを思い出すと、自然と頬が緩んでしまう。

 少しして機体の揺れも安定し、シートベルトランプが消えた。

「そろそろかな?」
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