不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
「触れていたいって……」

 一瞬フリーズするも少し経って理解できると、一気に顔の熱が上昇した。

「そんなこと言われても困るっ」

 恥ずかしくて俯きながら言ったら、大翔は「俺も困る」と言ってさらに強く手を握った。

「それにこれから桜花に俺のことを好きになってもらわなくちゃいけないんだ。こうやって手を繋いだら、少しは俺のことを男だって意識してくれるだろ?」

「……っ! 意識しちゃうから離してくれない?」

 そろそろ出口が近づいてくる。店員に手を繋いでいるところを見られたら恥ずかしいよ。

 羞恥心が限界に達して言ったというのに、大翔は手を離してくれなかった。

「やだ。せっかく桜花が意識してくれているんだ。もっともっと意識して、そして早く俺を好きにさせないと」

 意地悪な笑みを浮かべているところを見るに、絶対に私のことをからかっているよね?

 こっちは大きく心を乱されているのに、彼は余裕たっぷりなのが悔しい。その気持ちは大きく顔に出ていたようで、大翔はやっと手を離してくれた。

「ごめん、からかいすぎたな」

「……本当だよ」

 刺々しい声で言ったというのに、なぜか大翔は嬉しそうに頬を緩ませる。
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