不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
「ごめん、せっかく連れてきてくれたのに申し訳ないんだけど、寒くなってきたしそろそろ帰らない?」

 これ以上大翔の口から大切な人との思い出を聞きたくないと思ってしまった。適当に理由をつけて言えば、大翔は着ていたジャケットを脱ぎだした。

「気づかず、悪かった」

 そう言いながら彼はそっと自分が着ていたジャケットを私の肩にかけてくれた。

「え? いいよ、大丈夫。大翔が寒いじゃない」

 すぐに返そうとしたが、彼に止められてしまった。

「俺は平気だから。桜花に風邪を引かれたら心配で仕事にならなくて困る」

「……なにそれ」

 ついさっき大切な人がいるって言ったばかりなのに、どうしてそんな嘘を軽々と言えるかな。

 そう思っているくせに、大翔の言葉に喜んでいる自分が恨めしい。

「本当だぞ? 好きな人にはいつだって笑って元気に過ごしていてほしい。だから桜花、軽い風邪だって引くなよ? 心配でたまらなくなるから」

「……引かないよ。健康だけが取り柄だもの」

「それはよかった」

 ホッとした優しい眼差しを向けられ、どうしようもないほど胸が高鳴る。でも、こんなにもドキドキしているのは私だけでしょ?
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