不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
「桜花が飛行機に乗れない事情も知っている。だから気にすることはない」

「……そっか」

 相手にとっては自分の誇れる職業だろう。祖母が事情を説明してくれてよかった。きっとあとで知ったら嫌な気持ちになるはず。

 私だってお見合い相手が着物は嫌い、苦手だと言われたらやっぱりいい気分にはならないもの。

「相手は桜花の事情をちゃんと理解してくれたよ。それに祖父、父ともに外交官の家庭に生まれたら、その道に進むべきだろうという周りの反対を押し切ってパイロットになりたいという夢を叶えたそうよ。なかなか立派なお相手じゃないか。……そんな相手なら桜花の夢も応援してくれると思ってね、ふたりを会わせたくなったんだよ」

 優しい眼差しを向けられて言われ、返答に困ってしまう。

 本当に祖母なりに私のことを考えてくれているのが伝わってきたし、相手は上杉のおじさまのお孫さんでどうやら立派な方のようだし。

 万が一に相手がお見合いに乗り気だったら、なんて断ればいいのやら。
 頭を悩ませていると、襖の向こうから声が聞こえてきた。

「松雪様、お連れ様がお見えになりました」

 少ししてゆっくりと襖が開き、上杉のおじさまが部屋に入ってきた。

「すまない、待たせたね」

「いいえ、私たちも今来たところなんですよ」

 立ち上がって上杉のおじさまを出迎える祖母に続き、私も立ち上がる。すると私を見た上杉のおじさまは目を細めた。
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