不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
 車内では大翔が他愛ない話を振ってくれたのに、私は胸の高鳴りを鎮めるのに必死で相槌を打つだけで精いっぱいだった。

 自宅前に着き、大翔はハザードランプを点灯させて車を停めた。

「今夜は急な誘いに応えてくれてありがとう」

「ううん、そんな。……こっちこそごちそうさまでした」

 シートベルトを外して降りようとした時、大翔に腕を掴まれた。びっくりして彼を見れば、どこか寂しげに私を見つめる。

「な、なに?」

 困惑しながらも聞くと、大翔は目を伏せた。

「いや、久しぶりに会えたのにもう離れるかと思うと、寂しいと思って、さ……」

 歯切れが悪く言いながらチラッと私を見る瞳に、幼い男の子が重なって目を見開いた。

 今の男の子は誰? 顔も名前も思い出せないのに、どうして大翔と似ていると思ってしまったのだろう。

 突然浮かんだ謎の記憶に困惑してしまう。そんな私に気づいたのか、大翔は手を離して心配そうに顔を覗き込んできた。

「どうしたんだ? 桜花。夜風に当たり過ぎて体調が悪いのか?」

「あ……ううん、違うよ大丈夫。その……大翔が変なことを言うからびっくりしちゃっただけ」

 誤魔化すように適当に言ったものの、彼は不服そうに片眉を上げた。
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