不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
 せっかく大翔が言いづらいことを私から言ってあげたというのに、笑われるなんて心外だ。

 すると大翔は注目する周りの人たちに「騒がしくしてすみません」と謝った後、声を潜めた。

「素晴らしい妄想をしてもらったのに申し訳ないけど違うよ。……じいさんから桜花の人柄を聞いていたし、写真を見て可愛いと思った。それに実際に会って話したら、この人と結婚したいと思ったんだ」

「……っ! また冗談を言ってっ」

「冗談じゃないさ。……信じてもらえないなら、信じてもらえるまで今後も伝え続けるよ」

 一枚も二枚もうわてで言葉が続かなくなる私を見て、彼は満足げに目を細めた。

「ちょっと待っててくれ」

「あ、うん」

 そう言うと大翔は席を立ち、店舗のほうへと向かう。少しして戻ってきた彼の手には紙袋がふたつあった。

「これ、家族みんなで食べてくれ」

「え? うちに買ってくれたの?」

 受け取りながらも戸惑いを隠せずにいると、彼は持っている紙袋を掲げた。

「あぁ。せっかくだから今日ふたりで食べたものを家族にも食べてもらいたいと思ってさ。栄臣から最近は忙しいと聞いているし、わらび餅、食べに来られていなかったんだろ? だったら家で食べたらいい。きっと栄臣のやつ、喜ぶと思うぞ。うちのじいさんも喜ぶだろうし、桜花のおかげでいい土産ができたよ」

「大翔……」

 意地悪だけれど、こうして優しさに触れると簡単に絆されてしまいそうになる。

「ありがとう」

 胸の高鳴りを鎮めながらお礼を言ったら、彼は嬉しそうに目を細めた。
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