不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
 私が見たいって言ったことを覚えていてくれた。ただそれだけのことがたまらなく嬉しい。

 だけどそっか。明日からイギリス便ってことは、数日は帰ってこないってことだよね。

「フライト前の貴重なお休みに本当にありがとう。……気をつけていってきてね」

 すると大翔は目を大きく見開いた後、頬を緩ませた。

「ありがとう。今度は絶対にスマホを忘れないようにするよ。でないと、俺の愛する人は心配でたまらなくなるもんな?」

「そんなこと一言も言っていないけど?」

 すかさず突っ込めば、大翔は声を上げて笑う。

 なにがそんなに面白いのか……。でも、大翔の笑った顔を見ているとつられて私も頬が緩んでしまった。

「帰り、気をつけて」

「わかった。家に着いたら連絡する」

「うん」

 最後のやり取りをして車から降りようとしたところ、ドアを開けるより先に大翔が私の手を掴んだ。

 びっくりしてすぐに見た彼はせつなげな表情をしていて、胸がギュッと締めつけられる。

「ど、どうしたの?」

 胸の高鳴りを鎮めながら聞くと、大翔は「離れがたい」と言って深いため息を漏らした。そのまま俯いたものだから、彼の旋毛が見えた。
< 75 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop