不本意ですが、天才パイロットから求婚されています～お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました～【極甘婚シリーズ】

　なんだろう、この気持ち。私と離れたくないって言って項垂れる彼が可愛すぎるんだけど。

　男の人に可愛いなんて失礼だとわかってはいるけれど、胸のときめきが止まらなくなる。

　少しすると大翔は深く息を吐いて私の手を離した。

「悪い、引きとめて。……日本に戻ったらすぐに会いに行くから待っててくれ」

「……う、ん」

　今度こそ車から降りると、大翔は窓を開けて小さく私に手を振って車を走らせていった。

　もう彼が運転する車は見えないのに、胸が高鳴って家に入ることができない。

　深呼吸をして落ち着かせる中、背後から声をかけられた。

「桜花ちゃん？　どうしたの？」

　振り返ると買い物帰りなのか、エコバックを手に持った雪乃さんがいた。

「え、雪乃さんひとりで買い物に行ったんですか？」

　急いで彼女に駆け寄り、エコバックを預かった。

「ありがとう。でも少しは運動をしないといけないし、軽いものだから平気よ？」

「そうかもしれませんけど、お兄ちゃんが知ったら泣いて心配しますよ」