不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
 兄は私以上に和田のわらび餅のファンだった。甘い物が好きということもあるけれど、それ以上に両親との思い出がいっぱい詰まっているからだと思う。

 私はまだ幼くて、両親との思い出は断片的にしか残っていないのに対して、兄は今も鮮明にたくさんの思い出を覚えているそうだから。

「さて、今日は栄臣リクエストの肉じゃがにする予定なんだけど、いいかな?」

「もちろんですよ。手伝います」

「ありがとう」

 ふたりでキッチンに並んでさっそく調理を開始する。

「こうやって桜花ちゃんとふたりで料理をするのは久しぶりね」

「そういえば……。すみません、身重な雪乃さんについ甘えちゃって」

「いいのよ、料理好きだから。それにいつもみんな美味しいって言って食べてくれて嬉しいの」

 雪乃さんは「みんな」って言うけれど、本当は〝兄〟なんだろうな。現に結婚してからというもの、兄は毎日雪乃さんが作ったものなら、なんでも必ず「美味しい」と言って食べている。

 聞いているこっちは恥ずかしくなるが、でも好きな人に自分が作ったものを褒められたら嬉しくなるよね。
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