不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
 少し戸惑いながら店内をキョロキョロしている女性の顔は見たことがないし、新規のお客様だ。もしかして呉服店に入るのは初めてなのだろうか。

 その場合、声をかけられて困るお客様もいるからあまり声をかけないほうがいい。

「もしなにかございましたらいつでもお声かけください」

「ありがとうございます」

 どこかホッとした様子を見て、自分の判断は間違っていなかかったと知って胸を撫で下ろした。

 商品の補充を続けながら店内を興味深そうに見て回る女性を盗み見る。

 年齢は……私と同じくらいだろうか。背が高くてスタイルもいい綺麗な女性だから、シックな色の着物がすごく似合いそう。

 ひとりで来るくらい、着物に興味を持っているってことだよね? あまり若い女性がひとりで店に来てくれることは少ないから嬉しいな。

 声をかけて商品をひとつひとつ紹介したいところだけれど、余計なお世話になっちゃうだろうから必死に我慢する。

 すると少しして女性が近づいてきた。

「すみません、ちょっといいですか?」

「はい、もちろんです」

 待ってましたとばかりに笑顔で答えると、女性は恥ずかしそうに話し出した。
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