不本意ですが、天才パイロットから求婚されています~お見合いしたら容赦ない溺愛に包まれました~【極甘婚シリーズ】
 間違いなく私と同じように上杉のおじさまに騙されたか、無理やり連れて来られたはず。

 祖母と上杉のおじさまが他愛ない話をする横で、私たちは黙々と並べられた日本料理を食べ進めていく。

 一言も発さないところを見ると、これは向こうも断りたいで確定だよね。早く私も同じ気持ちだと伝えられたらいいのだけれど……。

「ふたりがゆくゆくは結婚となれば、松雪屋で新たに息子夫婦の分も仕立てないとな」

「その時はより良いものでお仕立ていたしますね」

「それは楽しみだ」

 なんて、来るはずもない未来の話で盛り上がるふたりに呆れてしまう。その一方で彼は我関せず状態で食べ終えたら、お茶を啜っている。

「さて、松雪さん。あとは若いふたりだけにして私たちはお暇しましょうか」

「そうですね」

 お見合いの席での決まり文句を言って、祖母たちはゆっくりと立ち上がった。

「大翔、ちゃんと桜花ちゃんをご自宅まで送り届けるように」

「もちろんです」

「大翔君、くれぐれも桜花をよろしくね」

 続いて言った祖母から、妙な圧を感じたのは私の気のせいだろうか。

「はい」

 力強い言葉で返事をした彼に祖母は小さく頷き、「それじゃ私たちはここで」と言って、最後に私に意味ありげな笑みを向けて静かに部屋から出ていった。
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