口に甘いは腹に毒

 ぬあ……この人やばい、やばい! 手慣れてる!



「こういうのは意識されてるときにやっておかないとな?」

「わっ、わざとですかっ……」



 じゃあもしかして、今までの吊り橋効果も戦略の内ってこと!?

 ううう、もう思い通りになってあげないんだから……!

 ドッドッドッ……この心音も気のせい気のせい!



「ん……苹果、ドキドキしてる」



 してない……ってば。


 他の人に見られる恥じらいもない那由多先輩が、甘い雰囲気でわたしを惑わす。

 撒き散らされたフェロモンの影響はわたしだけに及ばない。周囲のうっとりとした瞳が那由多先輩へ集中し、軽い集団催眠だ。



「早く俺を好きになろうな?」

「……やです」



 危険な香りしかしてこない。

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