口に甘いは腹に毒

 ようやくお目当てのコートを物色できた。

 これからもっと寒くなるだろうし、可愛く防寒したいよね。


 どうせなら、制服の上に着ても使える登下校用のものがいいんだけど……。



「苹果は暖色が似合うな」



 ちっっっかい。

 寄りかかって頭をこつんとしてきてる。


 ただし、これに過剰反応するのは罠なので注意。

 相手は意識してもらうのが勝利条件なため、わたしの勝ち筋はなんとも思ってないのを装うことなのである。

 わたしはバカかもしれないけど、学習するんです。



「……、マア、茶色かベージュが無難ですかネー」

「この赤みの入ったチェックもよくないか?」

「いいです、ネ」



 完璧だね。緊張ゼロで那由多先輩と喋れてる。



「全部似合う。全部買うか」

「アハハ、いくらすると思ってるんですか、先輩オモシローイ」


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