口に甘いは腹に毒


「苹果……」



 那由多先輩が静かにわたしの名前を呟く。

 わかってくれたかな。



「──おまえ、めんどくさいな」

「っエ゛」


「わかった。一着は自分で買え。他は俺が勝手に買う」

「わたしにくれるつもりなんですよね……?」

「ああ。俺には小さいだろ」



 それわかったって言わない。


 ていうかめんどくさいって……、めんどくさいって言われた……。

 わたしが傷付いてる内にコートを手に取り、レジでお会計を済ませる那由多先輩。カゴの中には、一番ほしいと思っていた商品が残っていた。


 ……ちなみに、一番安い商品でもあった。

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