口に甘いは腹に毒
帰り道。
ガタンゴトン、と電車に揺られるその横に那由多先輩がいる。
……危ないからついてくるとか言って聞かなかった。送るまでがデートなんだって。
乗り慣れてないのか、切符の買い方すら危うかったのは先輩だったけど。
「そういえば、なんで今日は車じゃなかったんですか?」
登下校じゃ車なのに、使用人と二人で出歩くときは車を使わないの、変な感じ。
散歩するような場所じゃなかったし。
那由多先輩はわたしの耳に口を近付け、ひっそりと話した。
「家にバレたらやましいことがあるからだな」
「……え」
家に言えないこと、わたしに言っていいの?
顔に出ていたらしく、彼は小さく頷く。
「苹果は知ってるからな。簡単に言えば……苹果への欲を抑える薬をもらいに行ってたんだ」
よ、欲?