口に甘いは腹に毒
背中を押され、一歩前に出る。
「っえ……」
後ろを向いたら、那由多先輩がやれやれと呆れたように笑っていた。
「送り届けたから、デートは終了だ」
家は、三軒隣だけど……。
そこまでは教えてないから、かな。
ううん、違うよね。
知りたいことがあるなら話し合えって、言ってるんだ。
「玉露、我慢するくらいなら俺と張り合おうなー。剣、帰るぞ」
「はい」
ひらり、手を振り歩き出す那由多先輩の元へ、剣先輩が付き添う。
どこから出てきた……? ずっといたんだ。
──ともあれ、変な空気で向かい合う二人の光景は続く。
「……」
「……」
おぼろげでも用件があるわたしから話を切り出そう。
思ってるのに、喉が詰まる。