口に甘いは腹に毒

 ある仮定が浮かび上がる。


 玉露くんが止めてくれるって思ってたのは──わたしが止めてほしいと思ってたから。

 わたしの願望を玉露くんの気持ちだとねじ曲げてた、という考え。



「……あの、ね。わたしといて、玉露くんは辛い?」

「ううん」



 あらかじめ用意してなきゃ出てこない早さだった。



「母さんが勝手に言ってるだけだよ」



 ほっとする。

 しないといけない、と言い聞かせた。



「寒いでしょ。早く帰ろう」



 連れていかれるのはわたしの家だ。

 広くて静かで何もない空間。


 いつだってそう。

 最終的に帰らなきゃいけないのは、玉露くんの元じゃない。


 足元が、──どんどん冷たくなっていく。

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