口に甘いは腹に毒
教室へ戻ろうとして、足を止めた。
廊下から少し覗いただけでも見えてくる、相変わらず友達に囲まれる玉露くんの姿。
この際もう、一番じゃなくたっていいんだ。
失わず済むなら、なんでもいい……。
「おい、苹果」
「っへ、」
後ろから腕を引かれた。
すっかり聞き慣れたこの高圧的な声は、顔を見なくてもわかる。
「な、那由多先輩……?」
「会議するぞ」
「え、え?」
いきなり来たと思ったら、なに?
それに、
「わたしのこと、呆れたんじゃ……」
「ん? どちらかといえば玉露に呆れてるな。いつになっても土俵に上がってこないから」
な、なんで玉露くん?
疑問符だらけになりながら、廊下の片隅で声を潜め合う。