口に甘いは腹に毒
すぐ隣に自立の師匠がいた。
二つしか学年が違わないのに、大人だよね……。
見た目ばかりじゃなく、内面もかっこいいと知ってしまった。
「那由多先輩が、」
「なんだ」
「……お父さんだったらよかったなあ」
「おい」
怒った那由多先輩がわたしの頬を片手で挟んだ。
不細工な顔にさせられて、抗議していたら、
「苹果ちゃん、御鏡先輩」
名前を呼ばれる。
「もうすぐ授業始まりますよ」
一言だけ告げると、すぐに教室へ踵を返す。
トゲのない穏やかな笑顔。一瞬だけど、脳裏に焼き付く。
……もう、心配もしてもらえない。
「……可愛くない後輩だな、玉露は」
那由多先輩が呟いた。