口に甘いは腹に毒
「喧嘩したのか?」
「……してないです」
それ以前の話。ぶつかるより早く、動きを封じられた。
喧嘩ならよかった。もしかしたら仲良りできる余地があるんだもん。
これは仲が悪くなったわけでも、嫌われたわけでもない。
話しかけたら、対応してくれる。
向こうから何かを言われることもある。
お昼は別の人と食べるようになったし、移動教室も一緒に行かないけど、話せば普通なの。
まるで……ただのクラスメイトになったみたい。
「……わたし、玉露くんがいないとダメなんだって思ってました」
彼がいるから、わたしは生きてる。
わたし一人に価値はないって。
「一人でも、生活はできるんですよね……」
所詮、思い込みにすぎなかった。
それが一番心を抉っている。