口に甘いは腹に毒

　那由多先輩がわたしの手を掬い、絡ませた。



「一人じゃない。俺がいる」

「っ……」



　あんまり優しい言葉、かけないで。

　すがってしまう。玉露くんのときと同じように。



「このまま俺のものになるんだったら、大歓迎だが」

「……まだ、待ってください」

「お、嫌でも無理でもないんだな」



　弱ってるときに誘われたから、揺らいでるのはあるかもしれない。

　那由多先輩は素敵な人だ。一緒にいるのも楽しい、けど。



「今は玉露くんのことで頭がいっぱいなので……」

「俺で頭をいっぱいにさせればいいんだな？」

「えっ」



　いや、もうちょっと整理してから考えさせてほしいって意味で……。



「大丈夫、悲しんでる暇は与えないからな」



　そう言った彼の語尾には、ハートが見え隠れしていた気がした。