口に甘いは腹に毒
玉露くんのことで落ち込みすぎないようにしてくれてる、この時間。
那由多先輩にとって無駄になるのが嫌だ。
「探せば、他にもケーキは見つかります。その中にはわたしよりもいい人で、先輩のことを大好きになる子もいると思うんですっ……」
「俺は苹果が好きだから、苹果がいい」
「……!」
初めて、面と向かって『好き』と言葉にされた。
「好きだから、今もここにキスして噛み付いて……」
「っあ、」
うなじに柔らかい感触が押し付けられる。
「舐めて吸って、俺のものである印を残したいと思ってる」
背中を駆け抜ける刺激に負けて、力が入らない。じん、とした痺れが思考を鈍らせる。
そこで、喋らないで……。
那由多先輩の顔が後ろから覗く。
ぱちっと目が合った瞬間、鼓動が大きく跳ねた。
「……でも、好きだからしない」