口に甘いは腹に毒





 御鏡家のキッチン。当然、一般家庭の規模を超えている。

 案内してくれた那由多先輩は、自室にて勉強をするそうだ。普段が余裕に溢れているから忘れるけど、受験生なんだよねあの人。


 剣先輩と二人きり、緊張感の空間である。

 ……あれ、剣先輩も一応高校三年生だね?



「さて。何をお作りになりたいのでしょう。材料は一通り揃っておりますので、なんなりとお申し付けください」

「え、えと……肉じゃが……とか」

「かしこまりました」



 ま、まぁいいか。

 それより、本当にここで作るの……?


 家の外観を見たときから怖くなっている。

 那由多先輩の帰宅を出迎える使用人さん達。四人が手を繋いで歩けるくらい広い廊下の横幅。

 どう見ても業務用でしかないキッチン。

 プレッシャーが襲いかかってきた。

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