口に甘いは腹に毒

 それをやる気に変換するため、貸してもらったエプロンの紐をぎゅっと結ぶ。



「先生、ビシバシご指導お願いいたしますっ!」

「気合い充分で素晴らしいです」



 相変わらずの無表情で乗ってくれた。


 まずはじゃがいもの皮を剥く。実は初挑戦。表面がでこぼこしているから簡単にいかない。



「……つ、剣先輩どうしましょう、こんなになっちゃいました……」



 最初の大きさと比べると、随分小ぶりになった。親指と人差し指があれば持ててしまう。

 剣先輩はじっと眺めるだけで、リアクションをしてくれない。

 沈黙が続く。



「……わたしのこと使えないゴミだと思いましたよね」

「っあぁいえ、すみません。少し考え事をしていまして」



 ……本当に? わたしの出来が悪くて失望してたんじゃなくて?

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