口に甘いは腹に毒


「刃物をお使いになっているのですから、お気をつけください」

「す、すみません」



 止血したのち、絆創膏を剣先輩に貼ってもらう。



「剣先輩が固まるくらいの考え事ってなんなんだろうと、気になってしまって……」



 応急処置の終えた手元を確認し、正直に話した。

 剣先輩もわたしと同じところを見つめている。
 


「くだらないことです」



 手を、下からそっと支えられた。



「私にも白亜様と同じ血が流れていればよかったのにと、机上の空論に考えを向けてしまっただけですので」



 それがどういう意図を含んでいるのか、わからなかった。

 でも、いつも無表情な彼の表情に憂いが差し込んでいる気がして。

 きっと、那由多先輩に思いを馳せているんだって悟った。

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