口に甘いは腹に毒

 根拠はどこにもないけど。



「大丈夫ですよ」

「……え、」

「那由多先輩、剣先輩のこと『最高なんだ、ウチの剣は』って言ってました」



 にっこり笑ってみせる。

 今まで紡いできた関係は、決して無駄にならないと思う。



「わたしと同じにならなくたって、剣先輩は最高な人なんですよっ……!」



 剣先輩の目が少し見開く。

 支えられていた手に力がこもった。



「白亜様──那由多様をどうぞよろしくお願いいたします」

「なんでそうなるんですか!?」



 どう繋がってその話になったの!?

 隙あらば外堀を埋めてこようとするじゃん!



「もう! 早く肉じゃが教えてください!」



 剣先輩に背中を向け、肉じゃが作りを再開させようと急かす。

 ……そのとき、笑ったときのような息遣いが聞こえてきた。

 気のせいじゃなかったらいいな。

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