口に甘いは腹に毒


「こちらが完成品になります」



 那由多先輩の座るオシャレなデスクの上へ肉じゃがが置かれた。勉強の休憩にお茶を淹れましたよ、と同じ雰囲気で。

 うん、すごーく浮いている。


 でも気にしてるのはわたしだけだった。

 那由多先輩は読んでいた本を閉じ、自分の前に肉じゃがを引き寄せる。
 


「どれ、食べてやろう」

「ええっ!」



 思わず出てしまった驚き声に、那由多先輩が箸を取った手を止めた。



「好きな女子の手料理を食べたいと思うのは不思議か?」

「う、いや……でもっ、わ、わたしのエキスは染み込んでないと思いますよ?」

「ふっ、なんだそれ」



 箸がじゃがいもを掴む。

 口に運ばれていくのをドキドキしながら見つめた。

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