口に甘いは腹に毒






『突然ごめんね。今から家に行ってもいい?』

『うん。待ってる』



 心臓をバクバクさせながら送信したメッセージに、彼らしいあっさりとした返答が帰ってくる。

 わたしから連絡すればこんな簡単に会えるんだって拍子抜けした。


 たかが数週間、されど数週間。

 二人きりで話せる時間が久しぶりすぎて、どういう態度を取ってたか忘れつつあった。


 玉露くんの家に行くときにわざわざ許可を取るなんていつぶりだろう。

 きっと大きな分岐点になる。

 オシャレをして、メイクをして、気合いを入れた。



「……玉露くん」

「いらっしゃい、苹果ちゃん」



 インターホンを押した数秒後。

 玉露くんは最後の記憶と変わらない態度で出迎えてくれた。

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