口に甘いは腹に毒

 嬉しい。本当に本当に嬉しい。

 腹の底から湧いてくる感情が、わたしをだらしない笑顔にさせた。



「へへ……わたし、やればできるんだっ」



 人の力を借りて、ようやくだけど。



「……。やらせなかったのは僕だから、苹果ちゃんから成長の機会を奪ってたかもね」

「ううん……! 玉露くんがやってくれるからって甘えてたのはわたしだし、自業自得なんだよ」

「……」



 玉露くんはフラットな表情のまま、イスの背もたれに深く体を預けた。

 わたしの頭より少し上をぼぅっと見つめ、静かに問いかけてくる。



「どうだった? 僕と離れてみて」



 考えるまでもない。



「寂しかった、よ」



 いや、寂しいなんてもんじゃない。人生終わったって思った。

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