口に甘いは腹に毒
「苹果ちゃんはあの人のこと、好きなの?」
「……わ、わかんない。でも良い人だと思うし、一緒にいて楽しいし、嫌ではないなって……」
「っだったら、……」
開いた口を止め、玉露くんは俯く。
「僕と二人でいるって発想はないんだよね?」
「あ……」
「あの人は苹果ちゃんに必要な存在になってくれたんだね」
そんな可能性、頭から完全に抜け落ちていた。
もう、那由多先輩が簡単に切り捨てられる人ではなくなってしまったということだった。
「うん。──ごめん、嘘ついた」
リビングに反響した、酷く冷たい声。
次に顔をあげた彼が見せたのは、感情のない微笑みだった。
「これ全然美味しくないよ、苹果ちゃん」
指の先には──冷めた肉じゃが。