口に甘いは腹に毒

 待って──『甘い』? 『食べさせて』?

 玉露くん、そう言った?


 混乱する頭の中で、なんとか冷静を取り戻そうと情報を手繰り寄せる。

 その間も、玉露くんの唇は左右の目元を行き来して。



「なんで僕以外もこの味を知ってるんだろう。なんであのとき苹果ちゃんを一人にしちゃったのかな……」

「やぅ、んっ……」

「その声、あの人にも聞かせたことあるの……? はあ、頭がおかしくなるのは僕だよね、」



 たくさん喋ってる玉露くんの言葉も入ってこない。

 答えはすぐそこなのに、くらくらして何も考えられなくなった。

 だめ……もうちょっとで、玉露くんに近付けそうなんだから……。



「……ぎょくろくん、まっ、て」

「嫌だよ。これが最後なんでしょ、だからとことん……嫌われないと」



 玉露くんがまぶたを閉じる。

 代わりに、口が開かれていた。

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