口に甘いは腹に毒

 ぎゅうっ……と力を入れて閉じ込めると、腕の中で玉露くんがピクリと反応した。



「な、なんでこんなことするのっ……」



 どうしてあのとき、玉露くんは『抱き締めてほしい』なんて言ったんだろう。

 本当に風邪で寂しかったからなのかな。

 違う気がするの。ただの願望かな。


 もしかして、玉露くんもわたしと離れたくなくて……とかだったらいいのになあ。



「言ったよね? フォークと一緒にいたら、いつ関係が壊れても仕方ないって」

「フォー、ク……」



 あぁ……そういうことなんだね。

 那由多先輩の話だけじゃなかったんだ。

 わたしのために、ずっと隠してくれてたんだね……。



「……早く僕のこと突き放してよ……。怖い思いして、あの人に助けを求めて……」



 両手が絡み合って、視線が交わる。

 恐怖という感情は、わたしの中に一つも存在していなかった。

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