口に甘いは腹に毒

 さっきよりずっと丁寧に、唇同士が触れた。

 こじ開けられた中を、角度を変えて幾度も味わい尽くされる。


 胸に甘い熱が広がっていく。

 わたし、玉露くんに食べられてる……。


 なんで嫌じゃないんだろう。

 なんで少し悲しいんだろう。


 たぶん、玉露くんにならうっかり骨まで食べられたって許せるよ。

 わたしの全部をくれた人だもん。


 だけどそんな関係……友達とは言えないね。



「ごちそうさま。もう二度と、ここへ来なくていいからね」

「あ、う……」



 背中を向けられる。

 拒絶されたとき、どうするか決めていてよかった。



「……わかっ、た」



 嬉しいのに、辛くて。甘いのに苦い。

 よくよく考えてみれば、最初から彼に対して抱えていた感情だった。



「──今までありがとう、玉露くん」



 なにもかも、遅すぎたんだね。

 
< 179 / 233 >

この作品をシェア

pagetop