口に甘いは腹に毒

 あからさまに肩を落とした彼女に気付かないふりをする。


『優しいところが好き』

『余裕があってかっこいい』

『白亜さんはただの幼なじみなんだよね?』


 恋愛感情として気に入られたことはこれまで何度かあった。そのたび、のらりくらりと回避してきた。

 苹果ちゃんに危害を加えるような人も止め、徹底して二人の世界を作り上げてきたんだ。

 鈍感な苹果ちゃんは何も気付いてなかったけど。消しゴムを何回隠されても、無くしたと思い込んで僕に借りに来てた。


 僕より優しく、僕より余裕に溢れている。

 そんな人が現れたとして。


 僕の世界の中心はいつだって苹果ちゃんだ。

 他の人に振り向く隙間は残っていない。


 苹果ちゃんの選んだ人が僕じゃなくても、それだけは揺るがない。

 厚かましくて自分でもがっかりするよ。

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