口に甘いは腹に毒

 しばらくすると、インターホンが来客をしらせた。

 内心びくびくしつつ、腹をくくってドアを開ける。


 いつもと違う髪型、おしゃれな服装の那由多先輩がいた。

 胸がチクリと痛む。



「……おはようございます」

「ん、車内で話すか、家の中で話すかどっちがいい?」

「……」



 那由多先輩の隣には、当然剣先輩の姿。

 車内だと那由多先輩の家に連れていかれる可能性があるし、運転手さんにも聞かれるかも。



「…………家、で」

「じゃあ、お邪魔してもいいか?」


「どうぞ……。で、でもできれば、那由多先輩だけで……」

「わかってる。剣は待機しておけ」



 かしこまりました、と剣先輩が返した。

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