口に甘いは腹に毒
無機質なリビングに通す。
普段誰もいない場所だから、生活感がないのがバレて恥ずかしい。
「座る場所……地面しかないんですけど」
「構わない。立ったままでもいい」
それより早く話を聞かせろと目が訴えていた。
決意を固め、簡潔に伝える。
「……玉露くんに、肉じゃがを美味しく味わってもらうことはできませんでした」
「そうか。剣直伝なのになあ」
「味わっては、もらえなかったんですけど……。っわたし、玉露くんが特別だって気付いちゃったんです……」
「……、はぁ」
深くため息を吐かれ、罪悪感に飲み込まれる。
「……すみま、せん。一昨日までは、那由多先輩ならわたしを食べないでくれるって信頼してたから、那由多先輩と一緒にいられるって思ってたんです。でも、」
でも違った。
玉露くんに対する気持ちと、那由多先輩への気持ちには、明確な違いがあったんだ。