口に甘いは腹に毒

 ちょっと不自然だよね。なんでそんなこと聞くんだろって思われちゃうかも……。

 「別にいいでしょ」とか「急に心配になったのよ」とか答えている辺り、案の定不思議がられているようだ。


 わたしのために聞き出そうとしてくれてるんだよね。

 優しいな……わたしのこと、嫌いなはずなのに。



「──今からカラオケ? どこの?」

「!」



 カラオケか……。玉露くんはあんまり歌ってくれないんだよね。玉露くんの方が歌上手いのに、たくさんわたしが歌うのを聞いてくれたこともあったっけな。

 玉露くんと作ってきた思い出が脳裏をよぎるたび、そわそわして少し苦しい。



「あぁ、あそこ。ねえ、ちなみに部屋番号って……あ、ちょっと」



 そこで、玉露くんのお母さんの動きが固まった。

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