口に甘いは腹に毒


「あ……切られちゃいましたか?」

「そうね。さすがに細かく聞きすぎたみたい。でもまぁ、あとは部屋番号だけだし、」



 彼女はスマホを仕舞い、ぎゅっとハンドルを握る。



「行きましょうか」



 車が動き出した。

 何か話すべきなのか運転に集中させるべきなのか迷ったけど。



「あ、あの……ありがとうございます、ここまでしてもらって」

「……まあ、仲直りは早い方がいいでしょ」



 彼女と二人きりになれるのは、今しかないと思ったから。



「今までたくさん、すみませんでした……」

「違うわよ、苹果ちゃんは悪いことなんてしてない」



 大人な返しをされてしまった。

 こういうこと、本人に直接言うのはよくないんだろうな。

 わかっていても、口は開く。

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