口に甘いは腹に毒
「でも、わたしのこと嫌い、ですよね……」
「……誰が?」
「えっと、お母さん、が……」
「私!?」
えっ……?
まさかびっくりされると思わなかった。
「わたしと会うと良い顔しなかったですよね……?」
「それはっ、私は玉露と違って抑えられる自信がなかったからで……あぁそうね、避けてたんだからそう思われても仕方ないわよね……」
玉露くんのお母さんは信号で止まると、ハンドルに頭を預けて項垂れた。
落ち込んでいるように見える。
「……嫌いじゃないわ。避けてたのは事実だけど……嫌いじゃないから!」
「そ、そうなんですか……!?」
「ええ、自衛できるなら玉露と仲良くしてくれて全然いいから!」
盛り上がっていく語気。
それに合わせて発進した車のスピードも加速していく。