口に甘いは腹に毒
🍴
side那由多






「失礼します、お呼びでしょうか那由多様」

「よし、来たな」



 解き進めていた問題集を閉じ、相変わらず無表情な使用人を部屋に招き入れる。

 少し強引に腕を引くと、いつもと違う空気を感じ取ったようだ。



「那由多様? ご用件は」

「用件というか、命令だな?」



 ベッドの前まで引っ張り、正面で体を近付ける。

 衝突を避けるため後ろに重心を移した剣は、バランスを取れずベッドへ腰を下ろした。

 立ち上がらせたくないので、上から押さえつける。



「……!? どうされ、ました……?」



 お、久々に表情を崩せた。

 昔は結構、表情豊かな方だったんだよな。俺との主従意識が強くなってから仮面を被り始めたみたいだが。

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