口に甘いは腹に毒


「私……私だったら、全てを那由多様に捧げらるというのに、どうして……」



 やけに感情を込めて言うから。

 おそらく、その一言が一番言いたかった本音なのだと悟った。


 もしも剣がケーキだったならば……願わずとも自ら体を差し出し、俺に味覚をくれるだろう。

 安易に想像できてしまう。


 剣の頭をくしゃっと撫でる。

 ……苹果もそういうことなんだろうな。



「空想に囚われたって仕方ないだろ」

「神様は不公平です……」

「そうでもないぞ。剣が剣のままでいることに、俺は満足してる」



 剣に今以上を求めることはないし、今を保てなくてもいい。

 隣でいてくれることに価値があるんだ。



「それから、別に俺は諦めてないからな」

「え……」

「明日からもよろしく、剣」



 頼れる相棒に笑いかける。

 知らなかったか? 結構俺は辛抱強いんだ。

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