口に甘いは腹に毒


「──ねえキミ、ケーキだよね?」



 とん、と肩に置かれた手。

 予想していなかった展開に頭が真っ白になる。


 振り向くと相手に見覚えがあった。

 さっきすれ違った男の人……。


 ニヤニヤ笑う気味悪さが、ぞわっと全身の毛を逆立たせた。

 嫌な予感がする。

 こういうときに限って、見事に的中してしまった。



「あの……っん!?」



 口元を塞がれる。カラオケ内じゃ、わたしの抵抗は雑音に成り果ててしまうだろう。

 文字を打っている暇はない。

 咄嗟にスマホの画面を開き、通話のボタンをタップして助けを求めた。



「いいじゃん、ちょっと味見させてくれるたけでいいからさ」

「んんっ、んーっ!」

「生きがいいなあ」



 一階へ引きずられていく。腕を掴む力が強すぎて逃げられない。

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