口に甘いは腹に毒

 あっ……!

 取られた腕を外そうとした反発でスマホが滑り落ちた。

 動揺した一瞬の隙を見抜かれ、あっという間に部屋の中へ連れ込まれる。


 ──地面に跳ね返ったスマホは通話中の画面を示していた。



 ソファーで仰向けに放り出されたわたしに男が馬乗りになる。

 いくらじたばた動いても、男が押さえつける手首はびくともしない。

 遅れてドッ……と恐怖心が沸き上がった。



「っいや! 離して!」

「はいはい。ケーキがさ、フォークに逆らえるの思ってんの?」



 な、なにそれ……。

 ケーキとフォークに優劣なんてないよ。


 世の中にはそんな風に考える人もいるんだ。

 本当に自分が恵まれていたんだと目の当たりにする。

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