口に甘いは腹に毒
救急箱を取るために腰を上げる玉露くん。よかった、特にリアクションはない。
背中を向けた姿を眺めていると、手の離れた部分がじん、と熱を持つ。
からだ、あつ……。
これはココアが暖めてくれただけなんだ。言い聞かせるため、ぐいとカップの中身を飲み干した。
「ちょっと冷たいかも、我慢してね」
コットンに消毒液を染み込ませて、ピンセットで挟んだものが近付いてくる。
湿ったものが首に押し付けられて。
ひやっ……。
「……、っ」
あ、あー……っ! これも、気を抜いたらダメなやつだっ……!
唇に力を入れることで声を出さないようにしていたら、玉露くんが口を開く。
「……守れなくてごめん」
伏せた瞳は憂いを含んでいた。
「僕がその場にいたら、苹果ちゃんに気持ち悪い思いをさせずに済んだのに」