口に甘いは腹に毒

 先輩の思考が予測できなくて怖いけど、わたしが間に入らないのは無責任なわけで。



「那由多先輩、すみませんで……」

「苹果、くどい」

「し……ええ……?」



 怒られた……!?



「癖なのか知らないが、いちいち謝りすぎだ。いい加減聞き飽きた」

「や、でもっ、わたし良くないことを先輩に……」

「悪いかどうかは俺が決める。俺は苹果が悪いことをしたとは思わない。よって、謝罪は結構だ」



 だって、人に迷惑をかけたら謝らないと。

 いや、今は謝ることが迷惑ってこと……?



「苹果ちゃん、謝るほどの価値はこの人にないから大丈夫」

「そうだな。謝る暇があるなら、俺のところに来い」

「そんな話はしてません」



 また二人が険悪な空気になる。

 うああ……どうしたらいいの!

 パニックになっておろおろしていたら、那由多先輩が吹き出した。



「いいな。この調子で張り合っていこう、玉露」

「嫌です。帰ってくれません?」



 三学期が訪れた、一月。

 一難去ってまた一難、新たな始まり。


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口に甘いは腹に毒【完】
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