口に甘いは腹に毒
「解けたっ! ありがと玉露くん!」
空欄を埋められ、満足したわたしが笑顔を浮かべたそのとき。
「──おい、白亜 苹果」
後方から、自分の名前がフルネームで飛んできた。
わたしをこんな高圧的に呼ぶ人はいない。
そもそも友達がいないんだから、名前を呼ばれる頻度すら少ない。
ついでに、同名のクラスメイトもいない。
玉露くんが怖い顔でドアの方を見ている。
え、なに、誰がいるの。わたし怒られるの……?
「いるんだろ。返事しろ」
「はぁっ! はいっ!」
も、もうどうにでもなれっ……!
勢いで振り向いた。
「あ……!」
肩がふる、と反応する。
そこにいたのは。