口に甘いは腹に毒

 艶やかな黒髪、切れ長な瞳、高貴な佇まい。

 オーラからして一般人とはかけ離れた美形が、わたしを鋭く射抜いている。


 ……間違いない。

 昨日、わたしを襲った犯人だ。

 ちゃんと傍らに従者みたいな人も控えている。



「“皇帝”だ……」



 クラスメイトの誰かが呟いた。

 えええ、やっぱりそういう立ち位置の人なの……? 敵に回したら怖いやつだよ……。


 彼は三年生のネクタイを身に付けている。一年の教室までわざわざ捜しに来たんだ。

 昨日は学校帰りにケーキ屋さんへ直行したから、制服を来ていた。同じ学校なら見つかっても仕方ない。


 火傷みたいにじり、と首筋が痛み出す。

 せっかく消毒してもらったのに……また思い出しちゃう。

< 31 / 164 >

この作品をシェア

pagetop