口に甘いは腹に毒
艶やかな黒髪、切れ長な瞳、高貴な佇まい。
オーラからして一般人とはかけ離れた美形が、わたしを鋭く射抜いている。
……間違いない。
昨日、わたしを襲った犯人だ。
ちゃんと傍らに従者みたいな人も控えている。
「“皇帝”だ……」
クラスメイトの誰かが呟いた。
えええ、やっぱりそういう立ち位置の人なの……? 敵に回したら怖いやつだよ……。
彼は三年生のネクタイを身に付けている。一年の教室までわざわざ捜しに来たんだ。
昨日は学校帰りにケーキ屋さんへ直行したから、制服を来ていた。同じ学校なら見つかっても仕方ない。
火傷みたいにじり、と首筋が痛み出す。
せっかく消毒してもらったのに……また思い出しちゃう。