口に甘いは腹に毒
玉露くんの後ろから先輩を覗いていたら、見事に目が合った。
怖いのに……逸らせないどころか、吸い込まれてしまいそうで。
気付けば、ただ見つめ合うだけの時間が一秒、二秒と増えていく。
「失礼します」
そこへ、わたしと玉露くんの間に従者みたいな人が割り込んで来た。
ハッとして顔を下に伏せる。
危ない。なんかあの人……嫌な魅力があって、困る。
「白亜様、少々お時間をいただきます」
「へ、」
いきなりぐわっと腕が引かれたかと思えば、
「幼なじみ、白亜 苹果は少し借りることにするから、よろしく」
先輩がわたしを廊下に連れ出していた。
「なあっ、ちょ、あのっ……」
わたしの意思は完全無視。掴まれた手首を外そうと抵抗しても、びくともしない。
玉露くんは追いかけようとしてくれたけど、従者に行く手を阻まれていた。