口に甘いは腹に毒


「なら昨日のはどういうことなんですか……?」

「フォークになって初めてケーキに会ったんだ。衝動が抑えられなかったというか……」



 と、そこで「いや、」と言葉を飲み込む御鏡先輩。



「……言い訳だな。理性に打ち勝てなかった俺が悪い」



 ピタリと歩みが止まった。手の力は緩められ、解放される。

 それから、体ごとまっすぐわたしと向き合ってくれた。



「本当に申し訳なかった。無理矢理で怖がらせたと思う」



 言葉が出ない。

 謝られるのは予想してなかった展開だ。


 あーあ……わたしって本当にケーキなんだ。

 彼の真剣な眼差しを見ていると、嫌でも腑に落ちてしまう。

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